相続法の解説 民法882条 相続開始の原因

相続法の解説 第1回

(相続開始の原因)
第八百八十二条 相続は、死亡によって開始する。

この条文にいう死亡とは、脳死ではなく、心臓の停止を指すと言われています。但し、臓器移植に関する法律が適用される場面(つまりは移植する場面)では、脳死を死亡と考えるとも言われます。

心臓が止まることで、出生で始まった人間の権利能力(財産、身分の権利等の資格のようなもの)が死亡によって終わることを定めています。
そして、死亡によってのみ、相続は開始することを、この条文は定めています。
なお、他の条文で、一定の場合は、死亡したとみなすという規定があり、その場合は、事実上は心臓停止を開始要件とはしていません。(民法31条 失踪宣告)

なお、このタイミングの先後関係で、相続人が定まります。
相続は相続開始時に生存している者のみが相続人となれますので、先に亡くなったり、同時に死亡した人は相続人になりません。
そのタイミングがいずれが先かによって、相続人が変わることになるので、先後関係が近い場合は、この条文が特に大きな意味をなしてくることになります。

人が亡くなると、権利能力(いろいろな権利が帰属する能力)がなくなってしまい、今までその人にあった色々な財産や権利が、その人に帰属していることができなくなります。
そこで、その財産や権利がどうなるか、それが次の相続の開始です。

相続の開始
→亡くなった方に帰属していた権利義務のうち、その方だけに帰属するもの(一身専属権。例 資格試験に合格していてその仕事ができる権利、恩給受給権など)と祭祀財産(お墓や仏具等)(祭祀財産は、民法897条により、第一に指定された方、第二に慣習により、第三に家庭裁判所の決定によって承継されます。)を除いたものが、一体となって、当然に(いわば勝手に)相続人に移転することを言います。
個々の財産が個別に移転するわけではありません。プラス、マイナスも、大きいものも小さいものも関係なく、全てが移ります。

これは、相続人が対象物(もしくは権利、義務)の存在を知っているか、亡くなったことを知っているかに関わりません。
もし、それが関わるとなると、亡くなったことなどがわかるまで、相続財産の帰属先がなくなってしまい、無主物(誰のものでもない物)となってしまい、一番先に、占有した者(拾った人みたいなイメージ)に所有権が移ってしまうことになってしまうことになります。
ですので、知らなくても概念上は全て相続人に移っていることになります。